2019年04月27日

政務活動費をどうしたら良いか(2)















今年の統一地方選は盛り上がりに欠けた、と思ったのは私だけかな。世の中、「令和令和」と浮かれている間に選挙が終わってしまった気がする。「年号ブーム」については、昨日(4月26日)の朝日新聞の朝刊で、大澤真幸さんが、日本社会が内向きになったことの現れだ、と述べていたことは興味深い。投票率の低さや無投票選挙区の問題とあわせ、社会が内向きになると、世の中を変えようとするエネルギーも喪失するのだな、と思った次第。

 さて、政務活動費の話の続編だ。実は政務活動費の制度の見直しについては、出版社の要請を受け、2017年初頭に「議員NAVI」という、議員を対象としたウエブマガジンに論評を書いた。支出項目と領収証の存在だけをチェックし、実際に議員活動に政務活動費をどう役立てたかを問わない現状の制度を、議員活動の「見える化」を実現する制度に変えようというものだ。それはこうだ。まず、年度初めに、議員や会派は、政務活動費で当該年度に予定する調査研究のテーマとそれに必要な費用を積算した資料を付して、政務活動費の交付申請書を議会に提出する。議会はこれをインターネットで公開し、市民の意見の募集をする。いっぽう、自治体はあらかじめ市民と有識者からなる第三者委員会を選任しておく。そして、交付申請書記載の調査内容や費用について、この第三者委員会はインターネットに寄せられた市民の意見も参考に、議員や会派の代表者と質疑応答をおこない、交付申請の承認(または一部承認)をする。その後、承認内容に適合する調査研究活動を議員や会派はおこない、年度末に調査研究の実施報告などの資料とともに領収証を提出する。最後に、第三者委員会による事前の承認内容に適合した支出についてのみ、政務活動費が交付される―というものだ。

 こうした制度は、調査研究のテーマを持たない議員については、政務活動費がもらえないばかりか、その年度の活動をアピールする機会もない、ということになる。しかし、調査研究をしたい議員にとっては、政務活動費を交付されるだけでなく、自己の活動を予告する機会にもなりうる。市民にとっても、この議員が議員として何をしたいのか、そのテーマに向けてどのような調査をするのかを知る機会だ。任期中のこうした記録は、市民が投票する場合の資料として重要なものとなる。

 ところが、その後、今回の統一地方選までに間に、こうした事前の申請にもとづく政務活動費の承認制度を採用した議会は現れていない。今のままでは、自治体の出納閉鎖後の今年の6月頃には再び政務活動費の問題となる支出が明らかになることは、ほぼ間違いないだろう。実はそうした不祥事を通して、議員活動の「見える化」に政務活動費を役立てようとする意識が生まれることを期待したいのだが。



(2019.4.27 新海聡)
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2019年03月21日

政務活動費をどうしたら良いか(1)















議員の政務活動費の支出に関する住民訴訟で、当該議員の政務活動費を用いた海外視察への支出が違法だ、という判決をとることができた。私的な観光旅行にすぎない、という判断だ。この裁判だけでなく、政務活動費の支出の違法を理由とする住民訴訟は、全国の裁判所で起こされている。住民訴訟の一つのパターンと言って良い。

 しかし、だ。号泣議員の会見が2014年7月、富山市議の相次ぐ不正支出が明るみになったのが2016年。市民オンブズマンが支出の透明性を問題にしたのが2002年、ついでに私が政務調査費の住民訴訟をはじめて提起したのが2005年。なんと、個人的には17年も政務活動費の問題に関与してきたことになる。しかも、違法支出のパターンはこの間ほとんど変わっていない。不正支出が発覚する度、「もらえるものはできるだけもらっておかな損だ」という議員の意識が透けて見える。それに対して、たくさん税金を使っていながら、ぱっとした仕事をしていないじゃないか、という議員や議会に対する市民の不信に火がつく。その連鎖が住民訴訟を生んでいる。今や、政務活動費問題は市民の議会に対する不信のアイコンだ。

 さて、統一地方選がはじまった。議員の選挙の課題として、政務活動費制度の検証を挙げるマスコミから取材をうける機会が多い。富山市議問題の前後あたりから、領収証のネット公開だけでなく、領収証を議会事務局がチェックして政務活動費の後払いをする制度を採り入れる議会も登場してきた。こうした取り組みに対する評価と改善点についての意見を求められるのだ。これに対して、違法支出対策としては評価できるものの、政務活動費問題の本質的な解決にはならないのではないか、と回答している。それはなぜか。こうした後ろ向きの対策では、市民の議会不信は解消されないからだ。じゃあ、どうするか。これについては次回で。



(2019.3.21)
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2019年03月04日

ポイントカード情報が提供されることの意味















少し前、Tポイントを運用するCCCをはじめとして、Pontaや楽天ポイントを含む約290団体が令状なしにデータを捜査機関に提供していることが報道された。捜査関係事項照会書を提出するだけで、捜査機関が情報を入手できているというのは、自由にとって極めて深刻な事態だ。照会書には「捜査のために必要があるので、下記事項に至急回答願いたく・・」という記載をするだけで、具体的に何を明らかにするために当該情報の入手が必要だ、という記載がなされることはまずない。もちろん、捜査関係事項照会書の交付には裁判所は全く関与していない。しかも、入手した情報を、捜査終了後にどうすべきかについて、法律は定めていない。捜査機関にとって、ポイントデータはとりたい放題、保存し放題の状態にあることをこのニュースは明らかにしている。ところが、このニュースに対する関心はそれほど高くないように思える。自分は悪いことをしていないから、無縁だ、ということか。

 そもそも、ポイント情報を企業が収集するのは、顧客をコントロールするためだ。10数年前の米国でのエピソードとして、購買傾向によって顧客の妊娠を判断し、マタニティ商品のセールスに成果を挙げた、というものがあったが、現在では、生活のあらゆる局面の行動にポイントが付与される。そのことによって、何を読み、何を見、何を聞き、どこへ行ってどこに泊まったのか、といった消費行動だけでなく、どのサイトを訪問したか、何に「いいね」をクリックしたか、たばこを吸うか、運動をしているか(長生きしそうか)といったデータまでもがポイントカードの元締め会社に集積される。そして、そうした大量のデータの分析によって、より確実に、個人を消費に駆り立てることが可能になるのだ。だからこそ、1ポイント1円を払っても損にならない。

 こうした「人となり」を示すデータがそっくり捜査機関にわたってしまうということは、「コンビニで強盗をしそうなやつ」「オリンピックでテロを考えそうなやつ」「警察に反感を持っているようなやつ」を抽出して捜査機関が監視することに道を開く。政治的な考えもわかるから,「政権に都合の悪いことを言いそうなやつ」の抽出も一発だ。AIによる分析で、再犯の可能性を判定し、再犯の可能性の高い被告人に重い判決を下した例すら米国で出てきている。

 CCCは照会書ではなく、令状を持ってこないと情報を提供しないことに方針を変えるようだ。少なくとも営業的には当然の判断だ。だが、問題は共謀罪の存在だ。共謀罪のある世界では、令状が権力の濫用の歯止めとはならない。共謀罪に該当する行為それ自体は犯罪の準備行為だから、ホームセンターでペンチを買った行為を、窃盗や強盗の共謀行為だ、と言い、その捜査に必要不可欠だ、と言って購入者のポイント情報を令状でそっくりとることが可能になることを考えれば良い。

 「監視社会」という言葉は時にエキセントリックな響きをもつ。しかし、実際の監視は、穏やかでお得な外被をまとってやってきて、僕たちをコントロールする。気がつくと、僕たちはAIから悪く見られないように行動を選択するようになる。そのようにして、権力者は社会をコントロールするのだ。このニュースに無関心で良いわけはない。

(2019.3.4)



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