今年の統一地方選は盛り上がりに欠けた、と思ったのは私だけかな。世の中、「令和令和」と浮かれている間に選挙が終わってしまった気がする。「年号ブーム」については、昨日(4月26日)の朝日新聞の朝刊で、大澤真幸さんが、日本社会が内向きになったことの現れだ、と述べていたことは興味深い。投票率の低さや無投票選挙区の問題とあわせ、社会が内向きになると、世の中を変えようとするエネルギーも喪失するのだな、と思った次第。
さて、政務活動費の話の続編だ。実は政務活動費の制度の見直しについては、出版社の要請を受け、2017年初頭に「議員NAVI」という、議員を対象としたウエブマガジンに論評を書いた。支出項目と領収証の存在だけをチェックし、実際に議員活動に政務活動費をどう役立てたかを問わない現状の制度を、議員活動の「見える化」を実現する制度に変えようというものだ。それはこうだ。まず、年度初めに、議員や会派は、政務活動費で当該年度に予定する調査研究のテーマとそれに必要な費用を積算した資料を付して、政務活動費の交付申請書を議会に提出する。議会はこれをインターネットで公開し、市民の意見の募集をする。いっぽう、自治体はあらかじめ市民と有識者からなる第三者委員会を選任しておく。そして、交付申請書記載の調査内容や費用について、この第三者委員会はインターネットに寄せられた市民の意見も参考に、議員や会派の代表者と質疑応答をおこない、交付申請の承認(または一部承認)をする。その後、承認内容に適合する調査研究活動を議員や会派はおこない、年度末に調査研究の実施報告などの資料とともに領収証を提出する。最後に、第三者委員会による事前の承認内容に適合した支出についてのみ、政務活動費が交付される―というものだ。
こうした制度は、調査研究のテーマを持たない議員については、政務活動費がもらえないばかりか、その年度の活動をアピールする機会もない、ということになる。しかし、調査研究をしたい議員にとっては、政務活動費を交付されるだけでなく、自己の活動を予告する機会にもなりうる。市民にとっても、この議員が議員として何をしたいのか、そのテーマに向けてどのような調査をするのかを知る機会だ。任期中のこうした記録は、市民が投票する場合の資料として重要なものとなる。
ところが、その後、今回の統一地方選までに間に、こうした事前の申請にもとづく政務活動費の承認制度を採用した議会は現れていない。今のままでは、自治体の出納閉鎖後の今年の6月頃には再び政務活動費の問題となる支出が明らかになることは、ほぼ間違いないだろう。実はそうした不祥事を通して、議員活動の「見える化」に政務活動費を役立てようとする意識が生まれることを期待したいのだが。
(2019.4.27 新海聡)