司法研修所に入所したとき、検察教官が最初に言った言葉は「検察官を権力のイヌという人がいますが、間違いです。権力そのものです。」というものだった。だからー検察官の行動は誰から見ても、誰に対しても公正平等でなければならない、どんな権力者も法の下にひれ伏しなければならない、これを体現するのが、検察官がつける秋霜烈日(しゅうそうれつじつ)バッジだ―というわけだ。ところが、今国会で議論されている検察庁法の改正は、検察官に付託されたこうした国民の信頼を根底から覆す。
すでに大阪地検特捜部による証拠のねつ造事件や森友学園の文書改ざんへの対応で、検察への信頼はかなり低下したことは確かだ。ところが、検察庁法改正案は、幹部検察官の定年を今よりも伸ばすだけでなく、内閣の判断で、さらに3年伸ばすことができる、という内容だ。要するに、権力に尻尾を振った幹部検察官は、ご褒美として本来の定年からさらに3年、検事総長などトップに居座れることになるのだ。森友問題の捜査で歯がみした私たちでも、権力に尻尾を振るような検察官は少数派だろう、くらいに思ってはいる。しかし、だ。政権に気に入られればトップに居座れる、と法律に定めてある以上、自分がトップに近くなればなるほど、老後の安定のために、検察官が政権の意向を気にするようになるのは、避けられない。そして、トップが政権に尻尾を振るような組織のなかで重用されるのは、政権に尻尾をふる検察官だ。時の政権に捜査のメスを入れようとする現場の検察官は、出世競争から外されることを覚悟しなければならない。
検察組織の弱体化は想像するよりずっと早いに違いない。
憲法を無視して緊急事態法を成立させ、コロナで世界が苦しんでいる今、秋霜烈日を骨抜きにし、検察を政権の私兵にすることにまで触手を伸ばした政権の暴走は危険だ。
(2020.5.15 新海 聡)
2020年05月15日
検察庁法改正にみる政権の暴走は危険だ
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