2017年12月23日

驚愕!の判決

1966年6月のビートルズ来日時に、警視庁が撮影したフィルムの情報公開訴訟の東京地裁の判決が、この20日にあった。なんと!敗訴。フィルムに映っているビートルズ以外の人の顔は個人情報だから、公開の対象とならない、なんだそうだ。東京都情報公開条例は「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」は非公開情報から外す、というレッキとした条文を持っている。当然、ビートルズとビートルマニアの映像は、世界的に様々な映像でボカシなく、公にされているし、1966年の来日だって例外ではない。当時はわが国でも公演の様子がテレビ放映され、20年前には過剰な警備とファンをテーマとした『ETV特集「日本を揺るがした5日間 1966年ビートルズ来日騒動を読む」』なんて番組も作られている(もちろんボカシなし)。ところが判決は、ビートルズ以外の人(ファン、警察官、関係者)の顔は、慣行上公にされている情報に当たらない、というのだ。うーん、一体世界のどこで、観客や関係者の顔をぼかしたビートルズの映像が流されているのかね。判決は「個人のプライバシーを害するおそれがある」ことを唯一の理由としているが、そうなら、アップル屋上でのビートルズのセッションを記録した『LET IT BE』も裁判官の頭では、個人のプライバシーを害しまくっていることになるわな。だいたい、この国の裁判所は、国家によるプライバシー侵害に対して個人をどれほど守って来たのか?住基ネットは合憲、情報プライバシー権すら憲法上の権利だ、とはっきり言っていないではないか。個人のプライバシーを理由としながら、本当に裁判所が守りたいのは、個人なのか、国の都合なのか。個人を守りたいのだ、というのであればぜひ、英国や米国の裁判官に、この判決について説明してもらいたいものだ。実は、判決を見て最初に思い出したのは、学生時代に読んだ、末弘厳太郎という法学者の文章だ。帰国者の手荷物の中にあったボッティチェリの「春」という名画の複製画が、税関でわいせつ物として没収されたことに対して書かれた「役人の頭」というエッセーで、末弘はこういう。『美術の専門家でない私には不幸にしてこの画についての詳しい適切な説明を与えることができません。けれども、一人の素人美術好きとしての私がかつてあの静かなフィレンツェのアルノ川に沿うて建てられた美術館の三階で、初めてこの「春」を見たときの感じ−−それはとうてい私のまずい言葉や筆で十分に言い表わすことができるものではありませんが−−を一言にしていうならば、それはむしろ「神秘的」な「ノイラステーニッシュ」なさびしい感じのするものでした。』『むろん私ごときものがどう思おうと、またよしんば天下の美術鑑賞家がいかに名画だということに一致しようとも、国家の風俗警察という目から見ればそこに必ずや独特の見解があるには違いありません。名画だから必ず絶対に風俗を壊乱しないとは限らないでしょう。名画を鑑賞するだけの能力をもたない低級な人間にとってはことにそうでしょう。私一個の考えでは「真の名画は絶対に風俗を壊乱することはない」と自信していますが、その考えを今ここで一般人に押しつけようとは思いません。しかし、今ここで問題になっているこの「春」を見て、もしもこれをわいせつだとか風俗を壊乱するとか思う人があるとすれば、私といえどもまたその人の眼と頭とを疑わずにはいられません。この画は誰が見てもむしろさびしい感じのする画です。またかりに全く絵画に趣味のない人が見たとすればなんだか変てこな画だと思うだけのことでしょう。しかしもしも、これを見てわいせつだと思ったり、多少なり劣情を感ずる人があるとすれば、それはよほど低級なアブノーマルな人間に違いありません。したがってあの記事にあったように、もしも税関の役人が旅客の十分な説明にもかかわらず、なおこれを理解しないでむりむたいに没収してしまったのならば、彼はよほど下等な変態的な趣味と性欲との持ち主であったか、または特に何か悪意をもってしたことだと私は断定したいのです。読者諸君はこの事件をもって一小下級官吏によってなされた些事なりとしてこれを軽々に付してはなりません。彼は一小下級官吏に違いありません。しかしこの具体的の事件について「国家」を代表したのは彼その人です。その以外の何者でもありません。外国から帰ってくる幾多の旅客がまず最初に接する「日本国」はすなわち彼です。そうしてその彼が旅客の携帯する「名画」のわいせつと否とを判断してその輸入の許否を決するのだと思えば、どうしてこの事件を一小事として軽視することができましょう。相手は「彼」一個人ではないのです。「国家」そのものです。この当該事件については「彼」の目、「彼」の頭がすなわち「国家」の目であり頭です。「役人の頭」を問題にしないで何としましょう。』
(青空文庫から引用)
驚くことに、これは大正11年に書かれたもの。何と、95年前の官吏と判決の発想が類似することよ。しかも、「役人」ではなく、国家の暴走を阻止することを任務とする「裁判官」が登場人物だ、という点で、より深刻だ。
トランプには違憲判断に躊躇しない裁判所がある。我が国にそんな裁判所はどの位あるのだろうか。
(「役人の頭」は現在、岩波現代文庫の『役人学三則』に所収されています。)
(2017.12.23 新海聡)
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2017年09月09日

大会、終わりました


私が事務局長をつとめる全国市民オンブズマン連絡会議の全国大会が、先週末の9月2日、3日、和歌山で行われた。今年のメインテーマは情報公開。森友問題や加計問題、自衛隊日誌の問題など、あるべき文書が「ない」とされた最近の事件を受けてのものだ。テーマに即して、47都道府県と20の政令市、48の中核市、それに14の省庁に対して、電子情報をどのように扱っているかのアンケート調査を行い(これ大変なのです)その結果を発表した。情報公開、というと、オンブズマンの活動の中でも、政務活動費の問題などと比較して、ムズカシイ、と思われがちだ。その分、大会テーマとしては地味で、知る人ぞ知る調査、となってしまうことが危惧されたが、9月3日にNH>が7時の全国ニュースで、毎日新聞も9月7日の朝刊で報道してくれた。
さて、アンケートでは、電子情報を情報公開の対象とするかどうかは、文書の中身などを見た上で判断する、という回答が圧倒的多数を占めた。さらに、14省庁の回答となると、かなりモンダイだ。情報公開法が、組織として用いる文書は情報公開の対象とする、と定めているにもかかわらず、役所の共有サーバーに保管した文書であっても、情報公開の対象とするかどうかについては、その都度判断する、というのだ。だって、共有サーバーに文書を保管するっていうのは、組織として使うからでしょ。加計学園問題では、役所の共有サーバーに保存していた「官邸の意向」などと書かれた文書も、情報公開の対象の行政文書とならない、と当初官房長官は説明したが、そうしたことが政府の文書では常に起こり得ることを示すのだ。
この結果を見る限り、国でも、自治体でも、公開したくない情報は、情報公開の対象ではない、として不存在(ありません)と回答することが、かなり頻繁に行なわれている気がする。我々も、ありません、と言われたら、それで納得するのではなく、本当にないのか、周辺の文書や会議などの録音などを情報公開請求して、「不存在」理由での逃げ得を許さないようにすべきだ
日本に情報公開を根付かせるには、まだまだ時間が必要である。

なお、この調査をふくむ全国大会での市民オンブズマンの発表資料は(全国オンブズマンのウェブサイト)から見ることができます。

新海 聡
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2017年07月22日

稲田って誰だ?

稲田って誰だ?

 お騒がせの稲田防衛大臣が、今度は、南スーダンでのPKO日報の隠蔽に関与していたか、どうかが話題になっている。大臣の関与は、防衛監察本部が調査をするようだが、防衛監察本部の調査などというものは、そもそも当の稲田が指示したものだから、その調査結果は、政権の、稲田という大臣の賞味期限に対する判断を示した結果となるだろう。真相が明らかになることは、期待できない。
 稲田に注目が集まっているが、南スーダンの日報問題の深刻さは、防衛省が情報公開請求に対して、「破棄して保有していない」ことを理由として、不開示決定をしたことにある。そもそも「破棄」は最強の不開示事由だ。本来は開示すべき文書であっても、物理的に存在しなければ、裁判所は開示を命ずることはできないからだ。こうして、開示したくない文書は、破棄したことにしてしまえば良い、という発想が権力者の中で育っていく。
 したがって、日報問題については、情報公開法5条各号の不開示事由ではなく、「破棄」を選択して不開示とした、防衛省の情報の隠蔽体質こそ、大いに批判されなければならないのだ。これに、自己の名でこの不開示決定をした稲田防衛大臣が、実質的に決定に全く関与していないという、(当たり前のように語られている)事実を加えてみると、東京の政府に情報を隠蔽しながら関東軍が暴走して始まった日中戦争当時から、自衛隊の体質は変わっていないことがハッキリする。
 稲田の問題は、自衛隊に対する文民統制の意思も能力もない政治家を防衛大臣に任命したことだ。むしろ、稲田にばかり目を奪われて、自衛隊の情報の隠蔽体質への監視が疎かになることこそ、内閣改造で安倍政権が目指すところではないだろうか。
(2017.7.22  新海 聡)
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