2019年03月21日

政務活動費をどうしたら良いか(1)















議員の政務活動費の支出に関する住民訴訟で、当該議員の政務活動費を用いた海外視察への支出が違法だ、という判決をとることができた。私的な観光旅行にすぎない、という判断だ。この裁判だけでなく、政務活動費の支出の違法を理由とする住民訴訟は、全国の裁判所で起こされている。住民訴訟の一つのパターンと言って良い。

 しかし、だ。号泣議員の会見が2014年7月、富山市議の相次ぐ不正支出が明るみになったのが2016年。市民オンブズマンが支出の透明性を問題にしたのが2002年、ついでに私が政務調査費の住民訴訟をはじめて提起したのが2005年。なんと、個人的には17年も政務活動費の問題に関与してきたことになる。しかも、違法支出のパターンはこの間ほとんど変わっていない。不正支出が発覚する度、「もらえるものはできるだけもらっておかな損だ」という議員の意識が透けて見える。それに対して、たくさん税金を使っていながら、ぱっとした仕事をしていないじゃないか、という議員や議会に対する市民の不信に火がつく。その連鎖が住民訴訟を生んでいる。今や、政務活動費問題は市民の議会に対する不信のアイコンだ。

 さて、統一地方選がはじまった。議員の選挙の課題として、政務活動費制度の検証を挙げるマスコミから取材をうける機会が多い。富山市議問題の前後あたりから、領収証のネット公開だけでなく、領収証を議会事務局がチェックして政務活動費の後払いをする制度を採り入れる議会も登場してきた。こうした取り組みに対する評価と改善点についての意見を求められるのだ。これに対して、違法支出対策としては評価できるものの、政務活動費問題の本質的な解決にはならないのではないか、と回答している。それはなぜか。こうした後ろ向きの対策では、市民の議会不信は解消されないからだ。じゃあ、どうするか。これについては次回で。



(2019.3.21)
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2019年03月04日

ポイントカード情報が提供されることの意味















少し前、Tポイントを運用するCCCをはじめとして、Pontaや楽天ポイントを含む約290団体が令状なしにデータを捜査機関に提供していることが報道された。捜査関係事項照会書を提出するだけで、捜査機関が情報を入手できているというのは、自由にとって極めて深刻な事態だ。照会書には「捜査のために必要があるので、下記事項に至急回答願いたく・・」という記載をするだけで、具体的に何を明らかにするために当該情報の入手が必要だ、という記載がなされることはまずない。もちろん、捜査関係事項照会書の交付には裁判所は全く関与していない。しかも、入手した情報を、捜査終了後にどうすべきかについて、法律は定めていない。捜査機関にとって、ポイントデータはとりたい放題、保存し放題の状態にあることをこのニュースは明らかにしている。ところが、このニュースに対する関心はそれほど高くないように思える。自分は悪いことをしていないから、無縁だ、ということか。

 そもそも、ポイント情報を企業が収集するのは、顧客をコントロールするためだ。10数年前の米国でのエピソードとして、購買傾向によって顧客の妊娠を判断し、マタニティ商品のセールスに成果を挙げた、というものがあったが、現在では、生活のあらゆる局面の行動にポイントが付与される。そのことによって、何を読み、何を見、何を聞き、どこへ行ってどこに泊まったのか、といった消費行動だけでなく、どのサイトを訪問したか、何に「いいね」をクリックしたか、たばこを吸うか、運動をしているか(長生きしそうか)といったデータまでもがポイントカードの元締め会社に集積される。そして、そうした大量のデータの分析によって、より確実に、個人を消費に駆り立てることが可能になるのだ。だからこそ、1ポイント1円を払っても損にならない。

 こうした「人となり」を示すデータがそっくり捜査機関にわたってしまうということは、「コンビニで強盗をしそうなやつ」「オリンピックでテロを考えそうなやつ」「警察に反感を持っているようなやつ」を抽出して捜査機関が監視することに道を開く。政治的な考えもわかるから,「政権に都合の悪いことを言いそうなやつ」の抽出も一発だ。AIによる分析で、再犯の可能性を判定し、再犯の可能性の高い被告人に重い判決を下した例すら米国で出てきている。

 CCCは照会書ではなく、令状を持ってこないと情報を提供しないことに方針を変えるようだ。少なくとも営業的には当然の判断だ。だが、問題は共謀罪の存在だ。共謀罪のある世界では、令状が権力の濫用の歯止めとはならない。共謀罪に該当する行為それ自体は犯罪の準備行為だから、ホームセンターでペンチを買った行為を、窃盗や強盗の共謀行為だ、と言い、その捜査に必要不可欠だ、と言って購入者のポイント情報を令状でそっくりとることが可能になることを考えれば良い。

 「監視社会」という言葉は時にエキセントリックな響きをもつ。しかし、実際の監視は、穏やかでお得な外被をまとってやってきて、僕たちをコントロールする。気がつくと、僕たちはAIから悪く見られないように行動を選択するようになる。そのようにして、権力者は社会をコントロールするのだ。このニュースに無関心で良いわけはない。

(2019.3.4)



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2019年02月05日

選挙の年に

公文書隠しやら公文書偽造やら、あれこれ書くことが多すぎて、しかもそういったことについてほかで書いているうちに、スッカリブログの更新がおろそかになってしまった。しかも年が始まってもう1ヶ月。ことしはもっと情報を発信しないとね。
 さて、ちょっと前の話になりますが、朝日新聞が「平成その先へ@東海」という特集で、市民オンブズマンを取り上げてくれた(1月9日付朝刊)。情報公開を用いた行政監視、という視点から、95年の官官接待の追及について回顧した、愛情あふれる記事だ。情報公開制度を用いた行政監視は、たしかに、それまでにはなかったことだと思う。では、あれから24年、情報公開制度はどこまで充実しただろうか。食糧費や旅費、交際費といった違法な支出が問題となったものについては、ほぼ公開されるようにはなった。しかし、市民が政治に参加するツールとして情報公開制度を考えたとき、最も公開されなければならない情報は、行政が何かを決定する過程の情報だ。政権や自治体の首長が何をしようとしているかを市民が知り、これに意見を述べることで、行政の決定に市民の意見を反映させることを情報公開制度は目指しているからだ。ところが、決定前の議論のプロセスが公開されることは、まずない。立法課程の情報などは国会に法案が上程されて初めて公開する、という運営が続いている。しかも、今の国会では情報をもとにした十分な議論は期待できない。誰が言い出したか知らないが、議論の内容ではなく、審議時間だけをもとに裁決が強行されることの繰り返しだからだ。情報公開制度の充実度は、政治がどれほど民主主義の原理に忠実に行なわれているかの物差しなのに、政権にはまったくその意識はない。この一年、財務省や文科省、防衛省で公文書の管理の問題があれほど問題になりながら、政権が公文書管理法の改正をしようとしないことは、政権の体質を示している。
 さて、2月3日の選挙で愛知県では大村知事が三選された。今年は統一地方選と参議院議員選挙があることから、選挙の年、という年始めの報道もあった。ところが、知事選の投票率はわずか35.5パーセント!それでも、前回の知事選の投票率を上回ったという。こんなことではいけない。低投票率が政治の暴走を生み出す(支えている)ことを意識すべきだ。
 投票してもどうせ変わらない、などということは絶対ない。投票した候補者が当選しなくても、当選した政治家をビビらせることは重要だ。「こんなことやっていると落ちるかもしれない」という気持ちを政治家に持たせるだけでも、政治の暴走の歯止めになるのだ。
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